研究概要 |
アンモニアドープ系フラーレン超伝導体の磁性と超伝導の関係について、(NH_3)K_3C_<60>の反強磁性磁気秩序状態の情報を微視的見地から得るために、プロトン(^1H)、カリウム(^<39>K)、カーボン(^<13>C)の核磁気共鳴による実験をおこなった。 低温のT_N〜45K以下でカーボンNMR線幅が27000ppm(〜2.7MHz)まで拡がることを明らかにした。これは軌道の異方性や混成効果だけでは説明できず、磁気秩序の証拠であると考えられる。C_<60>分子間のカリウム及びプロトンのNMRスペクトルも同様な変化を示す。これらのスペクトルの解析から低温状態がC_<60>分子あたり1ボーア磁子(1μ_B)を有した反強磁性相であることが結論された。更に、磁気モーメントから離れた位置にあるカリウムと水素核のスペクトルを解析すると、磁気モーメントの配列(反強磁性の波数)を予想することができる。最近、石井等により行われたX線構造解析の結果と、^1H_-,^<39>K-NMRの結果を考えると磁気秩序状態は1μ_B/C_<60>のモーメントを持つ分子軌道秩序を伴った反強磁性秩序であると考えられる。 さらに我々は、転移温度以上の高温のSQUID磁束計による磁化測定と炭素核のスピン・格子緩和時間T_1の測定結果から、高温状態もまた各C_<60>分子上に1ボーア磁子程度の磁気モーメントを有した局在スピン系として記述されることを明らかにした。局在スピン間には平均として反強磁性的な(磁気モーメントを反平行にする傾向)相互作用が働いていて、高温で熱的に揺らいでいたスピンが45K以下で反強磁性的に秩序化したものと理解される。この状態は、モット的電子局在の結果であると解釈するのが自然である。すなわち、各サイトに整数個(この場合3個)の電子が存在しバンド描像では金属になるべきところが電子間の反発により電子が局在すると解釈できる(現在投稿準備中)。
|