数ケルビン程度の低温領域において、温度の低下に伴う急激な抵抗率の減少が、Si-MOSFET(シリコンMOS電界効果型トランジスター)などの半導体界面2次元系において観測され、盛んに研究されているが、未だ、そのメカニズムは明らかにされていない.本研究では、磁気抵抗効果などの測定により、この全く新しい金属相の電子状態の解明を目指す.以下、本年度の研究実績を列挙する. 1.移動度が非常に高いSi/SiGe試料に測定を拡張した.磁気抵抗の振る舞いは、Si-MOSFETでの結果と類似しており、普遍性を確かめることができた.また、Si-MOSFETでは、スピンを完全に偏極させることによって金属相が消失したが、ヘテロ接合試料では、スピン偏極状態でも金属相が生き残った.スピン自由度は重要な効果を示すが、金属相の出現に対して必要条件ではないことが明らかになった.この結果は、第13回2次元電子物性国際会議において登壇報告され、また雑誌論文としても研究発表される(PhysicaEに掲載予定). 2.これまで、磁気抵抗効果の測定は、主として、2次元面と磁場との角度に着目して行われてきたが、今回、2次元面内での磁場方向依存性を調べた.Si/SiGe試料における磁気抵抗効果の測定では、2次元面に平行に印加された磁場と測定電流との角度に対する依存性が、若干見られたものの、磁気抵抗の主成分ではないことが明らかになった.このことは、平行磁場に対する抵抗率の変化をスピン効果に帰着させた.これまで行ってきた解析の妥当性を裏付けるものである(他の研究成果と併せて雑誌論文に投稿準備中). 3.Si-MOSFET以外の2次元系に対しても、金属・絶縁体転移の実験を行えるようにするために、FET試料を自作するプロセスを確立した.測定は、平成12年度に行う.
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