研究代表者はBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi2212)のトンネル分光研究を精力的に行い、重要な結果を見いだしてきている。しかし、アンダードープ試料に対してトンネル分光法によって観測された非常に大きなギャップの起源に対しての問題提起がされた。そこで、この問題に答えるべく、SISブレイク接合法により観測されるジョセフソン電流と接合抵抗の積のドーピング依存性、及びギャップの温度依存性を詳細に調べ、観測されたギャップが超伝導起源のものであることを証明し、Phys.Rev.Lett.にまとめられた。この証明より、低エネルギー擬ギャップ温度T^★と超伝導ギャップΔとが相関していることを示すことができ、低エネルギー擬ギャップ状態は超伝導の前駆現象として起こっていることを強く示すことができた。また全ホール濃度度領域にわたってトンネル伝導度にpeak/dip/hump構造が観測され、その位置は、反強磁性超交換相互作用Jでスケールする事が見いだされた。これらの結果より、対形成には磁気的相互作用が重要な役割を果たしていることを示す事が出来た。しかし、これらの特徴が銅酸化物超伝導体共通の特徴なのかを調べることがその機構解明の上で非常に重要になってくる。そこで、Bi_2Sr_<-x2>La_xCuO_<6+y>(Bi2201)及びCuBa_2Ca_3Cu_4O_y(Cu1234)において準粒子状態密度を調べる準備をした。Bi2201においては、Laドープ量x(x=0.3-0.8)を制御した試料をFZ法を用いて準備し、トンネル測定はx=0.5に対して行われた。Cu1234に対しても予備的な結果が得られ、dip/hump構造が酸化物高温超伝導体共通の特徴であることを見いだした。尚、上述の擬ギャップと超伝導ギャップの関係及びdip/hump構造については高温超伝導国際会議M2S-HTSC-VIで招待講演を行う予定である。
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