2次元C_<60>ポリマーtetragonal相を出発物質として、新たな炭素ネットワーク出現の可能性を第一原理電子状態計算の手法を用いて探索した。その結果、2次元C_<60>ポリマーに1軸性の圧力を20GPa加えると、同相はポリマー面間に新たな炭素結合を形成し3次元的にC_<60>分子が重合した3次元C_<60>に転移する事が明らかになった。得られた相は、3次元的にC_<60>が重合していると見なす事ができる一方で、sp^2、sp^3炭素原子が混在する3次元炭素結晶としても見なす事ができる。したがって、この系はダイヤモンドに次ぐ新たな3次元炭素結晶である。一方、この系の電子状態は金属的な特徴を示しており、そのフェルミレベルでの状態密度はアルカリ金属ドープ固体C_<60>と同程度の値を示している。また、この金属的な電子状態の起源はC_<60>ユニットの歪みによる3配位炭素サイトのダングリングボンドによることが明らかになった。力学的特性としては、体積弾性率が47GPaとダイヤモンドに比較してかなり低い事から、近年実験的に報告されているフラーレンを基にした、super/ultra hard物質の候補とはなり得ない事を示した。 さらに、この結果を基にモデル計算を用いて、大きいフラーレン、C_<74>、C_<78>、から形成されるフラーレンポリマーの可能性と電子状態を調べた。その結果これらのポリマーはエネルギー的に非常に安定であり、電子状態的にもモノマーの時より安定である事がわかった。この結果はこれらのフラーレンが単離され難いと言う実験事実の説明となると考えられる。
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