アンダーソン転移における電子間相互作用の効果については、これまで様々な研究がされてきた。しかし、電子間相互作用の効果については、数値的に扱える系の大きさが限られるので、有限サイズの効果を考慮することが重要な課題となってきた。また一方、これまでモデルの詳細には依存しないと思われていた臨界準位統計もが、境界条件を変えると変化する可能性が数値的に指摘された。境界条件はモデルの詳細の一部と考えることもできるので、これがアンダーソン転移においてどのような役割を果たすのかを早急に明らかにすることが必要となった。境界条件を変えてアンダーソン転移の解析を行ったこれまでの例は、有限サイズ効果が大きいために、あまりうまくいっていなかった。 そこで、境界条件を変えて、アンダーソン転移の解析を転送行列の方法を用いて注意深く行った。特に、十分高精度の数値計算を行い、有限サイズ効果を考慮して、臨界指数および臨界点を評価することに初めて成功した。その結果、スケーリング関数は境界条件に依存すること、臨界点や臨界指数は境界条件にはよらないことが明らかになった。これにより、コンダクタンスの分布や準位統計といった量の境界条件への依存性も理解することができた。これらの結果を得るためには有限サイズ効果を正しく評価することが不可欠である。 こうした結果を踏まえ、電子間相互作用を取り入れた場合にアンダーソン転移がどのように変化するのかを明らかにしていくことが次の課題である。本年度に得られた結果は、サイズの大きさが限られる電子間相互作用を取り入れた場合の解析にも役立つと期待される。
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