最も重要な研究成果として、量子多体系における格子と粒子数の整合性が低エネルギー励起の存在と関係していることを示した。すなわち、励起ギャップが生じるには基底状態の単位胞あたりの粒子数が整数となることが必要である。これは、一次元における代表者等の最近の研究を、量子ホール効果との関連を元に高次元に拡張したものであり、トポロジー的な議論に基づく非常に一般的なものである。さらにこの議論を応用して、フェルミ流体論において古くから知られているラッティンジャーの定理の新しい強力な証明を与えた。これによると、従来の方法では解析が難しかった近藤格子系についても、局在スピンがフェルミ球の体積に寄与することが明確に示される。 また、スピンギャップ系に磁場を加えると臨界磁場で磁気長距離秩序が生じることは以前より認識されていたが、我々はこれをマグノンのボーズアインシュタイン凝縮と見なせることを提案し、T1CuC13における最近の実験結果を解析した。特に、磁化の温度依存性は従来の平均場理論では理解が難しいが、マグノンの凝縮という立場では少なくとも定性的には自然に理解できる。 その他の成果として、以前提案したCu benzoateにおける磁場誘起ギャップの理論を発展させ、詳細な解析を行った。更に、本質的に同じ理論がYb4As3の磁場誘起ギャップも説明することを示した。また、Z_6対称性を持つ3次元の古典スピン系をくりこみ群に基づいて解析し、従来中間相と考えられてきた領域は実際には低温相へのクロスオーバーであることを明確にした。
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