研究概要 |
本研究は「誤り訂正符号」「画像修復」等の現代通信技術を支える諸問題に対し,量子力学的なトンネル効果を用いた高速度な復号法を構築し,その性能評価を行なうものである.今年度の研究成果は以下の通りである. 1.白黒画像の修復問題に対するMPM(Maximum Posterior Marginal)推定におけるエネルギー関数に量子揺らぎとして量子力学的横磁場項を導入し,この項が修復率に及ぼす影響を無限次元模型を用いて解析し,この項により巨視的変数の推定に関してロバストな修復が実現されることが示せた.これらの結果の一部はイタリアでの国際会議10th International Conference on Image Analysis and Processing(ICIAP'99)で発表され,「物性研究」誌上でも報告された. 2.1.のモデルに対して平均場近似に基づく反復解法を構成し,その精度および収束速度を評価した.この結果に関しては,この4月にベルギーで行なわれる国際会議8th European Symposium on Artificial Neural Network(ESANN2000)での研究発表が採択された. 3.1,2で得られたアルゴリズムを濃淡画像(多値画像)の送信及びその修復へ応用するための予備実験として,画素を古典的なポッツスピン,Q-イジングスピンの2種類の方法で表現し,各々に対して無限次元模型の解析的な計算により,MPM推定でのベイズ最適な修復を詳細に調べた.ポッツ模型での結果はPhysical Review E誌に掲載され,Q-イジング模型についての結果は現在投稿準備中である.
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