ベクトル型スピン構造、合金系の磁性、有限温度の磁性などで、重要となってくるノンコリニアー磁気構造を扱うことができる第一原理分子動力学法の開発を行った。本年度の成果は、計算コードの並列化を行い高速な計算を実現できるようになったことである。計算コードの並列化は、波数空間の積分について並列実行するする場合と波数空間積分において〓-点近似を用いた場合に電子の軌道について並列実行する場合との2種類を製作した。前者の計算コードは、主に比較的小さな単位胞の結晶の電子状態計算を高速化すつために用いることが期待される。後者のコードは、液体やアモルファスなどの不規則構造の電子状態計算や分子動力学計算に用いることが期待される。特に後者については、大きな記憶容量と高速な計算が必要とされるベクトル型スピン構造などの計算を実現することが可能となり、第一原理計算で合金系の磁性や有限温度の磁性などを議論することが期待できる。今後は、並列化された計算コードを原子数30-50子の鉄原子系、希薄磁性不純物半導体(Ga_<1-x>Mn_xAsなど)、遷移金属磁性クラスターなどに適用する。本研究の一環としてマグノン励起の第一原理計算を行ったが、他の計算結果と一致する結果が得られておらず今後検討を進めて行く方針である。
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