本研究では、複数本からなる結合した1次元鎖(梯子型電子系)における本質的な要素(電子間相互作用、不純物、外部磁場)がどのような役割を担っているのかを明らかにしてきてきた。そしてとくに、 ・束ねる1次元鎖の数を増やすことにより、物性はどのように変化するか。 ・電子間相互作用と不純物の関わり。単なる1次元鎖の研究では、状況により電子間相互作用と不純物との関わり方が変化するということが知られている。したがって複数本の鎖では、両者の関係がどのようになるかは自明ではなく、解析を必要とする。 ・外部磁場の効果。細線を磁場下に置くことにより、どのような新しい性質が期待されるかを解析する。 といった点に的を絞って解析を進めた。その結果、 ・鎖の数の偶奇性により違いはあるものの、結合した鎖の数が増えると、相互作用の不純物に対する効果が弱まってくる。すなわち、スピン自由度がある場合、相互作用は不純物の影響を弱めが、その程度が鎖の数が増えるに連れて下がってくる。そしてスピン自由度がない場合は、相互作用は不純物の影響を強めるが、その程度が鎖の数が増えると共に下がってくる。 ・磁場は不純物効果を弱めて、電子の局在長を伸ばす働きをする。 ということが示された。このことにより、現実のナノテクノロジーで使用されるような微細金属線での不純物の影響、相互作用の影響を理解する下地ができたと考える。そして磁場の効果を明らかにしたことにより、積極的に磁場を微細金属線の物性コントロールに利用する可能性を今後解析していきたいと考えている。
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