研究概要 |
まず、量子ダイナミクス法を用いた線形応答関数の計算法を適用し、アモルファスシリコン中のシリコン微細結晶の光吸収におけるサイズ依存性を明らかにした(Phys.Rev.B59,10309,(1999))。これにより、一見ポテンシャル差がないアモルファス領域と微結晶領域の境界で電子波の反射が起こり電子が微結晶領域に閉じ込められる「量子サイズ効果」が存在することが明らかになった。 つぎに、時間依存シュレーディンガー方程式を数値的に解く「オーダーN量子ダイナミクス法」を用いて二光子吸収係数を計算するアルゴリズムを開発した(Phys.Rev.E60,R1178,(1999))。さらに、量子ダイナミクス法を非直交基底系に拡張することに成功した(Phys.Rev.E61,R3314,(2000))。これにより、多くの電子状態計算プログラムで使用されているガウス基底のような非直交基底を利用して「オーダーN量子ダイナミクス法」の計算が行えるようになった。 そして、Pd(110)表面上に吸着したエチレン分子の配置、吸着エネルギーなどを、第一原理電子状態計算により研究した(RIEKN Review,No.29,12,(2000))。計算の結果得られたエチレンの吸着サイトは、実験結果と一致しないことがわかった。不一致の原因としては、表面のPd原子の格子振動によるエントロピー効果が重要であると考えられる。この研究から得られた知見は、有限温度でPd(110)表面に吸着したエチレン分子間にはたらく、表面準位を媒介とした相互作用の研究の準備段階として不可欠なものである。
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