平成11年度において本研究代表者は、高分子コロイド系の相形成および光多重散乱に関する研究を行い、以下のような成果を挙げた。 (1)高分子コロイド系のゾルーゲル転移に関する大規模シミュレーション : 高分子コロイド凝集系におけるゾルーゲル転移の臨界的性質について明らかにした。具体的にはゲル化が進行する振る舞いの時間依存性について数値的に調べる事により、ゲル化のカイネティクス、及びその構造形成について明らかにした。 (2)コロイド凝集系における光多重散乱スペクトルの解明 : (1)の計算によって得られた結果に基づき、コロイド凝集系の光散乱強度に関して数値的に調べた。その結果、従来説明が困難であった光散乱強度の振る舞いを、定量的に非常に良く説明する事が可能となった。 (3)2次元コロイド結晶における融解相転移 : 気相-液相界面におけるコロイド結晶の形成過程、及び融解相転移の性質を解明するために、モンテカルロ・シミュレーションを行った。その結果、この系は通常の3次元結晶の融解相転移とは異なり、2段階相転移を示す事が明らかとなった。具体的には秩序相と無秩序相の中間的な状態として、2次元系特有の"hexatic相"と呼ばれる状態が存在する事が確認された。
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