「ガウス型基底関数を使った組替えチャネル結合法を用い、反陽子ヘリウム原子(p^^-He^+)3体系のエネルギー準位の計算を行った。更に得られた波動関数を使い相対論および量子電気力学による補正を2次の摂動項まで計算した。遷移波長の計算値は実験値と7桁の精度で実験誤差の範囲で一致した。この結果はこれまでの反陽子原子の分光の精度を2桁向上したことになる。 実験誤差が反陽子と陽子の質量と電荷の対称性に由来すると仮定し、反陽子の質量と電荷を陽子から僅かにずらして遷移波長の計算を行いその依存性と実験誤差を比較した。今回の計算により、p^^-He^+の遷移波長の測定では陽子と反陽子の対称性を10^<-7>の精度で検証できた評価する事ができた。 今回得られた3体の波動関数を使い、反陽子ヘリウム原子の電気双極子モーメント強度の計算を行った。この精密な値を使うと、Korenmanによる計算(2体間にファン・デル・ワールス力を仮定した衝突係数法)では、遷移波長の標的ヘリウム密度依存性を説明出来ない事を示した。 p^^-He^+の微細構造および超微細構造の計算を行った。これは今夏行われるp^^-He^+マイクロ波共鳴実験の共鳴波長に対して予言を与えることが出来た。この実験との比較により反陽子の磁気モーメントの精度が大きく向上し、また反粒子に関する新たな知見が期待される。
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