研究概要 |
平成11年度には主に液体Heクライオスタットの開発を行った.クライオスタットは液体窒素容器(約3.0l)と熱的に接触した輻射シールドで囲まれた液体He容器(約1.6l)とで構成される.液体He注入管からの熱流入を極力避けるため,注入管は液体窒素容器内を貫通させ,しかも冷却面側を超高真空に維持できるような複雑な構造を採用し,実際にそれを完成させた. 液体窒素及びHe容器に液体窒素を充填した状態では,線形イオントラップを設置する容器底部の温度は約77Kであり,この状態を約16時間維持できることを確認した.この予冷の後,液体Heの注入を行った.容器内に設置した炭素抵抗(Allen-Bradley社,56Ω)の抵抗値変化を測定することによって,液体Heの液面を確認した.テスト試験のため容量の1/3程度の充填としたが,極低温状態(容器底部で約4K)を約1時間維持できることを確認した.また,クライオスタット外部の到達真空度は6×10^<-8>Paであった.従って,線形イオントラップ付近における実際の残留ガス圧はこの値より少なくとも1桁程度低い10^<-9>Pa台と予想している.以上の冷却テストによって,今回製作した装置が当初目標としていた性能をほぼ満足していることを確認できた.また,新たに立ち上げた紫外及び赤外半導体レーザーシステム及び線形イオントラップを用いて,トラップに閉じ込められたCa^+レーザー誘起蛍光法によって確認することができた.現在,冷却線形イオントラップに閉じ込められたCa^+の蓄積時間の測定を行っている.なお,平成11年度には高エネ研田無分室の閉所に伴う装置移動,及び理化学研究所との共同研究での若干の計画変更があり,トラップするイオン種をやむを得ずCa^+に変更した.来年度以降,これら液体He冷却線形イオントラップまたはその製作技術を不安定核Ca,Beの精密超微細構造分光実験に供する予定である.
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