本研究はストレージリングを周回する電子ビームと自由電子レーザーとのコンプトン後方散乱によってエネルギー数MeV〜数10MeV領域での大強度単色ガンマー線ビームを生成し、それを実用化することを目標としている。実用化に際してはガンマー線の安定供給が必要であり、そのためには自由電子レーザーが安定していることが必要不可欠である。そこで本年度は自由電子レーザーの安定化のための研究をおこなった。まず、床の振動が光共振器に伝わることでUVSORの自由電子レーザーが不安定になることがわかった。そこで、重量物であるみかげ石をベースに用いた光共振器を製作し、これまでと比べてより安定なFEL発振を得ることができた。しかしながら、長時間FELを連続発振させているうちに、熱的な変型等により共振器長が変化することでFELと電子ビームの同期が徐々にずれてしまい、連続発振の領域からパルス発振の領域へ移ってしまうという現象か観測された。また、ベロー構造等がいまだに振動を受け取り、この同期のずれと合わさることで、レーザーの縦方向にカオス的な不安定性が生じることがわかった。このそれらの不安定性を除去するべく、電子ビ一ムとFELの位相の高調波を用いた高精度検出の方法を確立し、現在それを用いた縦方向フィードバックシステムの開発をおこなっている。この開発によりレーザーの縦方向を安定化して、より安定なガンマー線ビームが得られるようになる予定である。
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