研究概要 |
南海トラフは,フィリピン海のプレートが日本列島の下に沈み込んでおり,これまでに巨大地震を繰り返し発生してきた地域である.一般に沈み込み帯では,プレート境界面において,地震を発生する領域と海溝よりの地震を発生しない領域があることが知られている.この地震発生・非発生境界は,海溝陸側斜面水深数千mの部分に位置しており,近傍に常設の地震観測点がないために,はっきりした境界位置,発生域での詳しい震源分布,発震メカニズム等ははっきりわからないことが多い.また,境界域付近の地震活動度は比較的低い.南海トラフでは,近年,海底地震探査やマルチチャンネル反射法地震探査が行われ,海溝から陸側斜面にかけての詳細な構造が求められている.本研究の目的は,南海トラフの地震発生・非発生境界域付近で,海底地震計を用いた微小地震観測を行い,海洋プレート沈み込みに伴う地震の発生様式の変化を明らかにすることである.地震の発生様式と詳細な構造から沈み込みに伴う物性の変化が推定可能になる.以上の観点から,平成11年度は,南海トラフにおけて海底地震計を用いた微小地震観測を行った.観測域は,室戸岬沖南海トラフ付近(東経135°,北緯33°付近),トラフ陸側斜面水深約2000mから海溝軸にかけての地域で,地震発生・非発生境界を含んでいる.この観測域は,平成10・11年度にも,海底地震計による微小地震観測が行われており,本観測は,長期にわたる繰り返し観測の一部にもなっている.海底地震計は,長期間デジタル収録型8台を用いた.平成11年11月に海洋科学技術センター「かいれい」で海底地震計を設置し,平成12年1月に洞海タグ(株)「あせあん丸」により,全台を回収した.この観測により,約2ヶ月の膨大な量の連続記録が得られた.また,これらの記録を高速に再生できるシステムの構築を完了し,現在解析を行っている.
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