今年度は、2軸圧縮載荷における剪断型亀裂の動的破壊成長シミュレーションを行った。2軸圧縮において最大主応力と最小主応力の比を変化させた時に、動的成長による破壊経路がどのように変化するかを調べることが主目的である。計算は自ら開発した境界積分方程式法によるコードを利用して行った。この計算手法は、方向に制限無く自発成長する動的亀裂を取り扱える点で優れている。本研究は圧縮下における剪断破壊の取り扱いの為、亀裂面上での摩擦力を取り入れる形に計算コードの変更が必要であった。静的平衡状態にある臨界亀裂を用意し時刻0から動的破壊成長を開始させる。臨界亀裂は、主応力比及び摩擦係数の初期値に応じて、主応力の方向から内部摩擦角分だけ傾いた配置をとることになる。破壊規準を満たす方向に次なる新たな離散滑り要素を置くことを繰り返し、動的な破壊成長の時間発展を数値計算により解析した。計算開始後、臨界亀裂から始まる動的な破壊成長は、急激に加速され高速に伝播するようになる。そして、この高速破壊伝播の最中に亀裂は分岐を起こす。分岐したそれぞれの先端は、異なる摩擦力の大きさの効果により異なる角度で非対称に曲がっていき、その後破壊成長を停止する結果となった。ある主応力の比においては、摩擦力の大きい領域に分岐が長くなるという結果を得た。この計算によって得られた非対称な断層端の破壊形状は地表に現れた活断層の形状の傾向と調和的である。
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