本研究では集中豪雨といった水の集中化メカニズムの理解を目的に簡易雨滴粒径分析計の開発、制作し、地上における雨滴の粒径分布を測定を行った。この簡易雨滴粒径分析計は赤外線センサーを横切る雨滴をストロボを用いてビデオカメラに静止映像を録画するものである。今年度は簡易雨滴粒径分析計の開発として試作型を制作、降雨シュミレータを用いてカメラ、センサーのテストを行った。これにより粒子補足部の改良を行い、映像の鮮明化、また、センサーの精度向上を実現することができた。 この試作器により山口大学農学部屋上において山口県を襲った台風18号からの激しい降水の観測を行い、現在解析を進めているところである。残念ながら台風18号が最も山口市に近づいた時には停電により測定不能になったが、台風による降水の開始から約15時間の連続観測を行うことができた。研究代表者のこれまでの研究において熱帯海洋域で発達した熱帯低気圧からの降水の観測を行っており、今回の観測結果である上陸後の台風からの降水との比較により興味深い結果が期待される。 また3月初めに鳥取において冬季日本海側に発達する雪雲からの降水の観測を行った。冬季鳥取では背の低い積乱雲から冷たい雨プロセスによる上層での氷晶形成起源の降水が見られる。これに対し夏や梅雨期の積乱雲とは背が高く下層の温かい雨と上層の冷たい雨が存在することから、冬季鳥取での観測結果との比較でそれぞれの降水機構を独立に観測したことになる。現在観測結果の解析を進めているところである。 来年度は山口市において継続的に降雨の観測を行うとともに、このシステムをドロップゾンデに応用できるようなカメラ、センサー部の改良と行う。
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