極域熱圏において中性風はエネルギー収支に極めて重要な役割を担う。平成11年度は、オーロラ活動に伴う中性水平風と鉛直風の時間変動、空間スケールを明らかにすることを目的とし、1996年4月-10月の期間の南極昭和基地におけるファブリーペロー光学干渉計観測データ解析を進めた。その主な研究成果を以下にまとめる。 a) ファブリーペロー光学干渉計の観測から得られた鉛直風変動の解析 視野7°のファブリーペロー観測データから、鉛直方向の風速を見積もった。その結果、オーロラ活動に伴って上部・下部熱圏ともに周期的な鉛直風変動が見られた。この現象はオーロラ活動よりも大気重力波が形成されたためと解釈される。この成果は論文として公表された。 b) ファブリーペロー光学干渉計の観測から得られた水平変動の解析 ファブリーペロー光学干渉計630nm観測とHFレーダー観測により、F層中性風とプラズマドリフトの関係を調べた。1996年5月13日イベントにおいて、熱圏中性風の方向はプラズマドリフトと対応し、その速度はプラズマドリフト速度の1/3-1/5だった。しかしながら、中性風の方向が極方向から赤道方向へ反転する時刻とプラズマドリフト反転には約20分後の時間差が存在した。この結果は、上部熱圏において中性風はイオンドラッグ力で駆動されることと、ジュール加熱効果の存在を示唆する。 これらのデータ解析には、今年度購入したデスクトップパソコンが用いられた。その際、今年度購入したデータ解析用ソフトウェアを用いた。処理された大量のデータはCD-ROMとMOメディアに記録された。得られた研究成果は国内学会等で示され、また海外の国際学会でも発表された。
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