研究概要 |
堆積物がなだれた結果形成される停止安息角については精度の良い定量的実験データが少なく,停止安息角を支配するパラメーターについて統一的な解釈が得られていなかった.本研究では2枚の平行な板の間に粒子を流して2次元の斜面を形成する装置を開発し,なだれの後の停止安息角を精度よく測定することが出来た. まず,本実験(2次元パイル実験)における装置幅が停止安息角に及ぼす影響を調べた.パラメーターを粒径と供給量に絞るために,実験材料として球形のガラスビーズを用いた.篩いにかけて5種類の粒径で実験した.その結果,停止安息角を粒径と供給口の大きさと装置幅の関数として表すことが出来た.さらにこの関数から,停止安息角に影響を及ぼすことのない装置幅を求めた.従来,傾斜箱を使った実験では装置幅は粒径の10倍以上必要であると言われていたが,2次元パイル実験ではその値よりもはるかに大きな幅を必要とすることがわかった.また,装置幅の影響のない停止安息角も求めることが出来た.この角度は粒径によらず供給量が増すと減少し,供給量が非常に大きくなると最小値17度を持つことがわかった. 同じ装置を水中に沈めて,水中での停止安息角の測定を行なった.水中でも空中での結果と似た結果が得られ,装置幅の影響がなく供給量が非常に大きいときの停止安息角の最小値は18度であった.粒子の運動様式は空中と若干異なる点もあり,これは粒子の比重が水中では小さくなることや水の粘性の影響と考えられる. 水中マイクロデルタの前面の斜面角度は流速が速くなりデルタの前進速度が増すにしたがって緩くなることが観察されている.この原因としてこれまで流体条件のみが注目されてきたが,流速が増すことにより斜面上に供給される堆積物の量が増加し,これが結果的に斜面角度を減少させるということも要因として考えられることが本研究によりわかった.
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