本研究は、近年マントル中での存在が重要視されるようになってきたCO_2が、どの様に上部マントルの主要鉱物であるオリビンの塑性特性に影響を与えるのかについて、天然で産出されるオリビンの微細組織の観察と変形実験から明らかにすることを目的としている。 本年度は、佐賀県唐津市高島及び島根県隠岐島後に産出するアルカリ玄武岩中に含有されるペリドタイトゼノリス中の変形オリビンの微細組織の観察を行った。微細組織の観察には、光学顕微鏡・ユニバーサルステージ・透過型電子顕微鏡(TEM)・ラマン分光測定装置を用い、特に、結晶粒径・結晶粒界の形状・格子選択配向(LPO)・キンクバンド・CO_2流体包有物・転位組織に着目した。 その結果、以下の五つの事が明らかとなった。1.LPOの観察結果:すべての試料はマントル下において大歪による塑性流動変形を受けている。2.粒径・粒界の形状・LPOの集中度・流体包有物の観察:全ての試料は変形後の熱回復を受けており、より深くに分布している岩石ほどより回復の程度が強い事を示す。3.LPOの集中度・キンクバンドの観察:ダナイト領域のオリビンでは[100](0kl) (特に(021))のすべり系が発達し、ウェールライト領域のオリビンでは[001]が発達している。4.ラマン分析:試料中に観察される流体包有物の多くがCO_2の液相、気相(あるいは二相共存)で満たされている。5.TEM観察:CO_2流体がオリビンの変形を促進させることを示唆する。
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