研究概要 |
犬山市栗栖地域から欠落なく完全連続的に採集された三畳紀後期〜ジュラ紀前期の層状チャート854層について,10層毎に処理した.また一部の層準については,完全連続の20層を処理した.まず採集されたチャート試料を層理面に垂直に高速ダイヤモンドカッターで切断し,スラブを作製し(1次切断),このスラブの一部をフッ化水素酸処理し,放散虫化石を抽出した.放散虫化石試料には,一部に鉄・マンガン酸化物がコーティングされたものが含まれている場合があるが,これらは強力な希土類磁石により除外した.その結果,以下の予察的な結論が得られた. (1)希土類元素(REE)の総濃度,Ce異常,Eu異常は,Al,Fe,Mn濃度とそれほど有意な相関関係を示さない.したがって,REEは放散虫化石中に含まれていると推察される.しかし,2桁にも及ぶ濃度変化が認められ,REEが放散虫化石のどの部位に含まれているのかは不明である.今後の重要な課題である. (2)ほとんどすべての試料がCeの正異常を示し,遠洋海域の海水の酸化還元状態をCe異常から評価することは困難である。 (3)Eu異常は妥当な変動を示し,三畳紀後期〜ジュラ紀前期にかけて8〜9回の熱水活動の激しい時期が存在したことを示唆している.最も激しい時期には,現在よりも15倍程度熱水活動が活発であったと推察される.また,30万年以上の長期間,熱水活動が盛んな時期が存在した. (4)放散虫化石のEu異常は,海水のEu異常をよく反映しており,海嶺熱水の活動度をモニターするのに最適の試料である可能性が高い.
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