研究概要 |
本年度は地震学的不連続面における揮発性成分の影響の中で、特にH_2Oの影響について明らかにした。まず、マントル遷移層において大量に存在すると考えられているオリビンの高圧相wadsleyiteの含水相hydrous wadsleyiteを合成し、それの結晶構造を調べた(Kudoh and Inoue,1999)。そしてhydrous wadsleyiteには斜方晶系以外に単斜晶系の試料も見いだされているが、この理由を明らかにした。さらに、オリビンの高圧相ringwooditeの含水相hydrous ringwooditeを合成し、SPring-8の放射光とダイヤモンドアンビルを用いることにより、その体積弾性率を求め、地震波の観測データと比較することにより地球内部の水の存在について議論した(Yusa et al.,2000)。現在はオリビンの相転移境界におけるH_2Oの影響について調べており、いろいろ面白い結果が得られている。 さらに地球内部における揮発性成分の重要性の研究として、マグマ生成における水の効果を研究しており、このため含水条件下でマントル物質の高圧溶融実験を行った。そして、ガーネットと液との希土類元素の分配を調べ、大古代に生成されたマグマ「コマチアイト」の生成に水が関与した可能性について議論した(Inoue et al.,2000)。更に今までの研究のレビューとして、地球内部における水の重要性について議論し、マグマ生成における水の影響についてまとめ考察した(井上,1999)。
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