申請者はまず電気加熱原子吸光分析装置を用いた岩石中の重金属元素の分析法を検討し、標準岩石試料のクロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、バナジウムを分析したところ、定量値は推奨値と良く一致(偏差<10%)した。またこの手法を用いて、93年度に採取した20試料について、前述の重金属元素濃度を測定した。これらの試料については炭素、硫黄、主成分元素についても測定を終了している。これらの試料のうち7個については有機物を分離・精製し、それが生物起源である確証を得るための炭素同位体比測定(依頼分析)に供した。その結果は本年7月までに出ることになっている。98年度に採取した試料約150個については蛍光X線分析装置を用いた主成分元素の測定と炭素、硫黄濃度の測定を終了しており、これらのデータをもとに有機物に富む試料を選択して重金属濃度を測定中である。 93年度に測定した試料群については、予想通り重金属のうち銅、亜鉛、鉛の含有量は砕屑成分から期待されるより有為に多く含まれていた。またクロム、バナジウムについても蛍光X線分析よりはるかに精度良く分析でき、砕屑成分寄与の見積もりがより正確にできるようになった。電気加熱原子吸光分析法による重金属の分析に関する論文は準備が整い、来年度早々に学部紀要に投稿する。また93年度に採取した試料についても来年度上半期中には投稿できる準備が進んでいる。
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