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有機物の高温高圧下での挙動を探るため、変成温度・圧力が調べられている変成岩中の有機物を分析した。試料として用いた変成岩は、三波川変成帯(高知県汗見川沿い)からのものである。これらの試料は、低変成(400度)から高変成(650度)を被ったことが鉱物学的に見積もられている。分析の結果、以下の2つのことが明らかになった。第1は、試料中のケロジェンは0.05-0.15のH/C比を示し、変成度が進むにつれこの比が小さくなっていく。第2は、すべての試料は、少量ではあるが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、樹脂を含み、それらの組成は変成度によらず一定している。第1の結果は、変成度が高くなるに従い、有機物が水素を失って、徐々にグラファイトに近づいていくことを示しているのであろう。第2の結果は、650度もの高温下で地質時代を経ても有機物は安定に存在し続けることを示している。さらに、変成温度が400度から650度まで変化しても有機物の組成は変化しないことから、これらの温度環境下では有機物がある種の安定状態に至っていることを示唆するのかもしれない。一般に有機物は続成過程、変成過程を経てメタンや水として水素を失っていき、最終的にはすべてグラファイトに変化すると考えられている。本研究で得られた第1の結果はこの過程を支持している。しかしながら、第2の結果は、有機物が変成過程を経ても少量は生き残り得ることを、従来の有機物に関する一般常識につけ加える必要性を示している。今後、有機物の熱安定性をより明確にするため、今回試料として用いた三波川変成岩とは異なった特徴を持つ領家変成岩を採集、分析する予定である。
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