研究概要 |
惑星間塵および南極宇宙塵の電子顕微鏡および放射光X線を用いた非破壊分析を行った。走査型電子顕微鏡を用いた惑星間塵の形態や粒径の観察と主要元素(Mg,Al,Si,Ca,Feなど)の測定の結果、惑星間塵および南極宇宙塵は、大きな結晶一粒からなるものは非常に稀で、ほとんどのものがサブミクロンサイズの微粒子鉱物数百から数千の集合体であり、Solar abundanceに近い主要元素組成を持つことがわかった。筑波高エネルギー加速器研究機構のシンクロトロン放射光X線を利用した蛍光X線分析による微量元素(原子番号21から40まで)測定の結果、宇宙空間から飛来し地球大気圏で空気分子との摩擦熱で部分溶融している宇宙塵はGa,Geなどの揮発性元素を系統的に失っていることがわかった。しかしながら、Zn,Pbなどの揮発性元素は熱変成の程度と相関を示さず、地球上での汚染があったことを示していると考えられる。その後、放射光X線を利用した回折X線法による惑星間塵の構成鉱物存在比の推定を行った結果、惑星間塵および南極宇宙塵ともにolivine,low-Ca pyroxene,Fe-sulfude,Fe-oxideおよびphyllosilicateの5種の鉱物の混合物であることが判明した。大気圏突入時の熱の影響の少ない試料の分析結果から、太陽系空間には大きく分けて3種の惑星間塵が存在することがわかった。Olivineに富むもの、low-Ca pyroxeneに富むもの、phyllosilicateに富むものである。今年度の研究結果は、シンクロトロン放射光は極細粒の惑星間塵および南極宇宙塵の微量元素分析および構成鉱物推定に非常に有利であることを示した。来年度は今年の分析で元素・鉱物組成が同定された惑星間塵および南極宇宙塵の水素、炭素、酸素、希ガスなどの同位体分析を行う。
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