1.本研究専用の真空昇華ラインを設置することにより、これまでと同じ時間で、原料フラーレンの純度と量を増加させることが可能となった。また、アジ化アルカリ金属の熱分解反応を行うための電気炉を新たに製作した。これらにより、錯体合成回数を増加することができた。 2.アジ化アルカリ金属の熱分解反応の条件-主として反応温度および反応時間-を変化させることにより、得られる錯体中のフラーレンとアルカリ金属の化学量論比が大きく変化することが判明した。さらに、反応条件を丁寧に制御しないと、試料全体に均一な化学組成とならないことも判明した。 3.紫外光電子スペクトルの測定結果より、錯体中のフラーレンとアルカリ金属の化学量論比によって、錯体の電子構造が如実に変化することが判明した。具体的には、アルカリ金属の存在比によって、最高被占準位がめまぐるしく変動し、錯体の電気伝導度をはじめとする電子的性質を反映するものであることが判明した。 4.高次フラーレンのイオン化ポテンシャルは、炭素数の増加に伴い減少し、その減少が段階的に起こることを見いだした。また、この段階的な減少が、高次フラーレンの構造と密接な関係が相関があることや、疑似原子モデルで説明できることを提案した。 5.本研究専用の試料精製装置を導入したことにより、不純物の混入を心配することなく、微少な試料の分離精製作業を行うことが可能となった。 6.金属原子内包フラーレンの電子状態は、中空のフラーレンの電子状態と比して、価電子帯のごく浅い部分だけが変化し、その変化の仕方は、内包される金属原子によって大きく変化することを示した。
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