パルス分子線とレーザー技術を組み合わせた実験において、測定の精度および検出限界を決めている要因の一つは、レーザーによって励起される分子の量である。本研究では、実験的な測定感度を高めるために分子線を効率よく利用することに着目し、パルス分子線をレーザーにより効率よく励起できる、レーザーと完全に同軸な分子線を生成することのできるパルス分子線源を開発、評価を目的とした。 今年度はレーザービームと同軸な分子線を生成するパルス分子線源の設計制作を行った。パルス分子線源は、市販のパルスバルブをもとに、吹き出し部を改良した。その結果、新たに開発したレーザー同軸パルス分子線源は既存の分子線源に比べ、1)分子線強度は弱いこと、2)分子の(回転)温度は若干高いこと、3)パルス時間幅は数倍長くなってしまうこと、が明らかとなった。分子線源の性能面で改良の余地があることが示され、吹き出し部の改良や駆動電源の改良などで、分子線強度、温度、パルス時間幅の点で改善が可能と結論した。また、新規分子線源の開発に平行し既存の分子線源を用いて、アセチレンのリュードベリ状態に関する実験を行った。アセチレンのg対称リュードベリ状態を(2+1)REMPI-TOFMS法で観測、バンドの回転解析、量子欠損の値より、約83000cm^<-1>に4p^1Δ_g及び4p^1Σ_g状態が存在する事を見いだした。またそれら2つの準位において、前期解離速度および前期解離機構に大きな違いがあることを見いだした。
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