本年度は、分解フーリエ赤外反射吸収分光法の測定の対象になる表面吸着系の基礎的な実験及び、新規に導入された赤外分光器の設置、調整、及び赤外反射吸収分光法のための改造を行った。表面吸着系の実験では、白金単結晶(Pt(111))上でのメタノールの完全酸化反応を超高真空下と常圧のガス流通下で調べた。白金表面上で、メタノールは分子状吸着酸素と反応しギ酸イオン種を経由して二酸化炭素に酸化されることが分かった。この酸化は解離吸着酸素では起こらないことが分かり、分子状吸着酸素の酸化反応への高い活性が明らかになった。常圧の酸素とメタノールの混合ガスを白金単結晶上に導入すると、定常的に酸化反応が起こり二酸化炭素の発生が見られた。この時の表面を赤外分光法で観察すると、真空中の実験と同じように表面にはギ酸イオン種が形成されていることが明らかになった。二酸化炭素の生成速度と表面吸着種の被覆率の速度論的解析から、定常的に生成する二酸化炭素はギ酸イオン種の分解に由来するものであることが確認された。この系は、定常的な条件をコントロールすることが容易なものであり、今後の時間分解測定の良い題材であると考えられる。また、新規に他予算によって導入した赤外分光器を赤外反射吸収分光法に用いるための光学装置を製作した。従来の装置は光路が大気に露出していてスペクトルの信号雑音比が低いので、新規のものでは真空排気の可能な容器を作りその中に光路を作った。この装置はラピッドスキャン機能などの時間分解測定用の機能を有していて、これを次年度の時間分解測定に用いる予定である。
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