研究概要 |
1.サイズ選別したアルミニウムクラスターイオン,Al^+_n,と希ガス原子との衝突過程に関する実験を行った。その結果、全体振動モードと価電子状態との相互作用が大きく、衝突による全体振動の励起によってクラスターの構造が変形し、価電子が局在化が起こることによって解離反応が進行していることが分かった。 2.溶媒和NH_4ラジカル,NH_4(NH_3)_n,の3p-3s遷移に相当する電子スペクトルを光解離分光法により測定し、電子構造のサイズ依存性とラジカルのクラスター内での溶存状態を検討した。n≦4では吸収極大が大きく低エネルギーシフトが観測され、基底状態よりも励起状態の方がよりイオン性が強く、安定化が大きいことが分かった。n≧4では吸収極大の位置はほとんど変化しなかった。その結果、第一溶媒和圏はNH_3分子が4個で閉殻となり、5個目以降のNH_3分子は第一溶媒和圏の外側に配位することが分かった。これらの結果により、アンモニウムラジカルはサイズの増大に伴ってクラスター内で自発的にイオン化することが明らかになった。次に、電子移動過程の微視的な機構を明らかにするために、特にn=1,NH_4・NH_3錯体の振電スペクトルを測定し、特徴的な分子間振動帯を観測した。非経験的な理論計算による解析を行った結果、縮重した励起電子状態がJahn-Teller効果によって分裂し、NH_4・NH_3錯体が結合軸から僅かに歪んでいる構造となっていることが分かった。 3.生体分子を非破壊的に孤立状態で真空中へ導入し、その電子構造や溶媒和構造を検討する目的で、電気スプレーイオン化法を用いた質量分析装置を製作した。金属原子-ポルフィリン錯体などの光解離分光を行った。その結果、励起状態においてポルフィリンから金属原子へのエネルギー移動の過程が反応の選択性において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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