研究概要 |
1.液相中にある反応分子の真空中で孤立状態における溶媒和の機構、化学反応の制御などについて研究するために、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法を用いた、2台の八重極イオンガイド、2台の四重極質量分析計、および2台の四重極イオンベンダーを持つ質量分析・光解離分光装置を製作した。この装置を用いて、以下のような系について光誘起反応に関する研究を行った。 2.ヘム蛋白質であるシトクロムcの多電荷イオン(+9〜+17)の光誘起反応について検討した。特定の電荷数のイオンを選別しYAGレーザーの2・3倍波(532・355nm)によってヘムを2光子励起すると、多電荷イオンからの電子脱離(イオン化)が観測された。電荷数の増加に伴って電子脱離の分岐比が単調に減少し、電荷数が+14以上では電子脱離が起こらなくなることが分かった。 3.鉄ポルフィリン錯体イオン(ヘミン)にジメチルスルホキシド(DMSO)が溶媒和したクラスターイオンの光誘起反応について検討した。YAGレーザーの2・3倍波(532・355nm)によって、ヘミンをπ-π^*励起すると、溶媒であるDMSOの蒸発する過程と、ヘミンから-CH_2COOH基の脱離する過程とが競争的に起こることを見いだした。 4.ヘミンと1.4-ジアザビシクロ[2.2,2]オクタン(DABCO)との錯体イオンの光誘起反応について検討した。YAGレーザーの3倍波(355nm)によって、ヘミンをπ-π^*励起すると、ヘミンヘDABCOから電子か移動し、DABCOイオンがヘミンから解離することによってDABCOイオンが生成する機構を明らかにした。
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