昨年度は異なる種類の金属を内包したヘテロ金属内包フラーレンとしてHoTm@C_<82>を生成・単離し、そのXANESの測定を行った。その結果、どちらの金属も3価の状態にあることが明らかになった。本年度は異種金属の電荷状態が互いに異なるような系を構築するために、2価と3価がそれぞれ大変安定であるCaとHoを内包させる原子として選び、CaHo@C_<82>の生成・単離を行い、電荷状態を決定することを目的とした。 CaとHoを含んだ炭素ロッドのアーク放電によってススを作成し、そこからフラーレン成分をトリクロロベンゼンで抽出した。これを高速液体クロマトグラフィーの手法により分離し、CaHo@C_<82>を2種類単離することができた。単離できたかどうかは、質量スペクトルによって確認した。非ランタノイドとランタノイドの金属を同時に内包した金属フラーレンの生成・単離は今回の例が最初である。次に電子状態を調べるために、吸収スペクトルの測定を行った。紫外-可視-近赤外吸収スペクトルは、炭素ケージの電子状態を反映している。したがって、内包される金属原子から炭素ケージに何個の電子が移動しているかによって大きく異なる特徴を有する。Tm_2@C_<82>やHoTm@C_<82>では、内包される金属が異なるにも関わらず吸収スペクトルは非常に良く似ていた。これは、どちらのフラーレンにおいても、内包金属原子からケージへ6個の電子が移動していたからである。CaHo@C_<82>の吸収スペクトルは二つの異性体のどちらも、ケージが6-の電荷状態にある金属フラーレンと異なっていた。これは、Caが2価、Hoが3価でケージが5-になっているという事を示唆しているものと考えられる。つまり、当初の目的どおりに内包される金属の価数が異なるものを生成できたと考えられる。
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