研究概要 |
第一電子励起状態にあるアセチレン分子の6つの基準振動は、中心に対して対称的なgerade振動と反対称的なungerade振動に分類できるが、ungeradeの準位は選択則により紫外光一光子での励起では観測されない準位である。そこで、アセチレンを高分解能OPO赤外光レーザーで電子基底状態のC-H反対称伸縮振動の単一の振動回転状態準位に励起し、さらにYAG励起色素レーザーの倍波の紫外光を波長走査する赤外・紫外二重共鳴分光法を用いて、電子励起状態の面外シス変角振動v_4'と面内シス変角振動v_6'、およびこれらの振動に面内トランス変角振動v_3'がいくつか結合した振動の振動回転準位に励起して、レーザー誘起蛍光スペクトルの測定を行った。v_4'振動は赤外光レーザーで選択した中間状態の対称性との関連で本来は禁制であるが、2つのシス変角振動準位がエネルギー的に互いに近傍に存在し、許容なv_6'振動とコリオリ相互作用しているために観測できるようになる。これら2つのシス変角振動にv_3'振動が結合しても、コリオリ相互作用が見られることがわかった。本来はKa=1のP,Q,R枝である3本のピークが観測されるはずであるが、実際にはもっと多くのピークが見られ、これらはKa=1だけでなくKa=0,2,3の準位として帰属できた。さらに、コリオリ相互作用に基づく回転解析を行い、コリオリ相互作用定数と分子定数を決定することができた。また、geradeの3v_3'準位で報告例のあるトリプレットとのカップリングによる分裂と同様の細かいピーク分裂が3v_3'+v_6'状態で観測されたが、3v_3'+v_4'状態では観測されなかったことから、このカップリングが面内で起こることが示唆された。
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