研究概要 |
7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン化合物は,フランのDiels-Alder反応によって容易に得られる化合物である。この化合物の架橋エーテル部(C-O結合)を位置選択的に切断できれば,得られる化合物は多くの生理活性物質に含まれる置換シクロヘキサノール(例えばビタミンDのA環)であり,また立体特異的に得られることとなり非常に有用である。ところが,7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン類の位置選択的なC-O結合の切断法は少なく,また激しい条件を要するものが多い。そこで,温和な条件で反応させられるSmI_2に着目し,還元的なC-O結合の切断を試みた。 用いた基質は,7-oxabicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-one(1),ethyl(7-oxabicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-ylidene)acetate(2),ethyl(7-oxabicyclo[2.2.1]hept-2-ylidene)acetate(3)である。ケトン1を基質とした時は,位置選択的にC-O結合が開裂した後に脱水,芳香環化したフェノールが高収率で得られた。また,α,β-不飽和エステル2を用いた時は,位置選択的にC-O結合が開裂したシクロヘキサジエノール誘導体,もしくはさらに芳香環化したフェニル酢酸エチルが得られた。α,β-不飽和エステル3を用いた時は,位置選択的にC-O結合が開裂したシクロヘキセノール誘導体のみが得られた。 ケトンのα位のアルコキシ基は,Sm(II)によって瞬時に脱離することが知られていたが,今回環状エーテルは極めて脱離しにくい(反応時間:数時間〜1日,Sm(II):過剰量必要)ことを明らかにした。立体電子効果(アルコキシ基がカルボニル平面に対して垂直に立てない)がその主たる原因と考えられる。
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