研究概要 |
シクロプロパン誘導体はその特異な反応性のために立体選択的合成法が多く研究されており,電子リッチなオレフィンや芳香族置換オレフィンに対する不斉触媒反応においては多くの成果が報告されている。しかし,電子不足なオレフィンの場合には,まだ余り例がなく,電子求引基を3つ以上もつ高反応性が期待できるシクロプロパンに関しては,例が報告されていなかった。本研究において,キラル補助基として8-フェニルメントールを有するピリジニウムイリドとメチリデンマロノニトリル誘導体との反応を行なったところ,トランスに置換した生成物のみが生成し,興味深いことにイリドの対カチオン効果がどの基質を用いても存在しないことがわかった。しかし,溶媒効果が存在し,芳香族誘導体においては特に極性が高く求核性が低いと考えられるトリフルオロエタノール中で88:12のジアステレオ選択性となった。また,脂肪族誘導体においては,アセトニトリル中,特にt-ブチル置換体では91:9のジアステレオ選択性となった。置換ピリジンについて検討したところ,電子求引基を有するものでは,-78℃でも反応が進行するようになったが,選択性が若干低下した。また,電子供与基としてメトキシ基を用いたところ,t-ブチル置換オレフィンで96:4にまで選択性が向上した。絶対立体配置については,ピリジンを置換基に持つシクロプロパン生成物のX線結晶構造解析により決定でき,キラル補助基ののπ-スタッキング効果が選択性に利いていることが示唆された。
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