研究概要 |
Scyphostatinの疎水性側鎖部分の不斉合成法を開発した。疎水性側鎖のC8',C10'位部分の不斉導入は、加水分解酵素Porcine pancreatic lipase(PPL)を用いたmeso-ジオールの不斉アセチル化反応により高い立体選択性でおこなった(98%ee)。疎水性側鎖部分のC14'位の不斉は、n-酪酸の不斉アルキル化反応によりおこなった(94%ee)。これら別々に不斉合成した疎水性側鎖部分のC8',C10'位部分に相当するセグメントとC14'位に相当するセグメントをWittig反応により結合し、疎水性側鎖部分のC12',C13'の三置換二重結合部分を合成した(E:Z=27:73)。E,Z-異性体はカラムクロマトグラフィーにより分離可能であった。疎水性側鎖のC2'-C7'位に相当するトリエン部分は、エチルブロモソルベートから合成したホスホナートを用いたWittig反応により高立体選択的に構築した。合成した疎水性側鎖部分とScyphostatinの疎水性側鎖部分の^1H NMRを比較することで、Scyphostatinの疎水性側鎖部分は(8'R,10'S,14'R)であることが示唆された。今後は、光学活性な化合物を出発物質として用い、その不斉中心の遠隔不斉誘導によるScyphostatinの親水性部分のエノン部分の立体選択的合成について検討する。また、Scyphostatinの親水性部分と疎水性部分を結合することによりScyphostatinの立体選択的全合成を成し遂げ、絶対立体配置を決定したい。
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