研究概要 |
本年度はScyphostatinの親水性部分の立体選択的合成法の開発を行なった。当初、計画していた不斉中心の分子内移動によるスピロラクトンヘの立体選択的な酸素官能基の導入は困難であった。交差共役ジケトンを有する化合物への求核試剤の1,4付加反応では高い面選択性で反応が進行することが知られている。そこで、合成中間体である共役ジケトンを有するスピロラクトン誘導体の求核試剤との反応、エポキシ化反応、シクロペンタジエンとのDiels-Alder反応の立体選択性について検討した。スピロラクトンを還元して得られたジオールと求核試剤との反応は進行しなかった。TBAF存在下、過酸化尿素を用いたスピロラクトンのエポキシ化反応では収率14%ながら4種の可能な生成物のうち、一種類の異性体のみが得られた。シクロペンタジエンとスピロラクトンとのDiels-Alder反応では8種類の可能な異性体のうち、2種類の異性体のみが98%の収率で得られた。得られた異性体はendo付加生成物で交差共役ジケトンの一方の面からのみシクロペンタジエンが反応したものであった。この付加環化生成物のエポキシ化反応を行ない、逆Diels-Alder反応を行なうことでスピロラクトンのエポキシ化物を得た。一方の環化付加生成物から得られたエポキシ化物は目的化合物と同じ立体で同じ位置にエポキシ基が導入されたものであった。もう一方の環化付加生成物から得られたエポキシ化物はスピロラクトンを過酸化尿素でエポキシ化して得られた生成物と同じ生成物であった。今後は、得れらたエポキシ化物を用い、Scyphostatin親水性部分の立体選択的合成を完了したい。
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