研究概要 |
研究者は、β-ケトイミナトコバルト錯体を触媒とする不斉1,4-ボロヒドリド還元反応の展開を目指し、α,β-不飽和カルボン酸エステルの不斉1,4-還元反応について検討した。その結果、光学活性1,2-ジフェニル-1,2-エチレンジアミンより誘導されるケトイミナトコバルト錯体を触媒とし、カルボン酸エステルとしてイソプロピルエステルを用いることにより種々のβ,β-ジアルキル-α,β-不飽和カルボン酸エステルを定量的かつ高い不斉収率で対応する光学活性飽和エステルに還元することに成功した。今後は、さらに良好な不斉収率を与えるコバルト錯体触媒の開発、さらに広範囲のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の不斉1,4還元反応に展開する。 さらに、本反応を効率的な光学活性1,3ジアリール-1,3-プロパンジオール類の合成に応用した。光学活性1,3ジアリール-1,3-プロパンジオールとその誘導体は有効な合成方法が少ないため、良好な不斉配位子としての可能性があるにもかかわわらず、不斉反応への応用はあまり行われていない。そのため、不斉ボロヒドリド還元反応による方法は1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオール類の有用な合成法になると考えた。種々検討の結果、光学活性1,2-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,2-エチレンジアミンより誘導されるケトイミナトコバルト錯体を触媒として用いることにより、1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオンを定量的かつ高い不斉収率、高いジアステレオ選択性で対応する1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオールに還元できることを見出した。本反応は10g以上の基質の還元反応にも容易に適応可能であり、得られた粗生成物を酢酸エチルから再結晶を一回行うことにより、光学的に純粋な1,3-プロパンジオールを得ることができる。
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