研究概要 |
平成12年度はβ-ケトイミナトコバルト錯体を触媒とする、1,3-ジカルボニル化合物の不斉ボロヒドリド還元反応を発展させた。まず、対称2-アルキル-1,3-ジアリール-1,3-ジケトンの不斉還元反応に適用したところ、2つのカルボニル基のうち1つのカルボニル基のみが還元されたβ-ヒドロキシケトンを高収率かつ高ジアステレオ・高エナンチオ選択的に得ることができた。次に非対称1-アリール-3-アルキル-1,3-ジケトンの不斉還元反応への適用を考え、まずコバルト錯体が存在する場合としない場合でアリールケトンとアルキルケトンの混合物の還元を行った。その結果、水素化ホウ素ナトリウムのみではアルキルケトンが優先的に還元されるのに対し、コバルト錯体が存在するとアリールケトンが優先的に還元されることを見いだした。そこで、非対称1-アリール-3-アルキル-1,3-ジケトンを本不斉還元反応を用いて速度論的光学分割を行ったところ、アリール位に隣接するカルボニル基が選択的に還元されたβ-ヒドロキシケトンが高いレジオ、ジアステレオ及びエナンチオ選択性で得られることがわかった。さらにα-置換-β-ケトエステルの不斉還元反応では、塩基としてtert-ブトキシカリウムを添加することによりエノール化を伴いつつ高立体選択的に不斉還元反応が進行することを見いだした。例えば、3-(2-ナフチル)-3-オキソ-2-メチルプロピオン酸エチルの動力学的速度論的光学分割を伴う不斉還元反応では、収率82%、anti-体選択性94%、anti-体の不斉収率97%eeで対応する生成物を得ることができた。 また、本不斉還元反応を用い天然物の中間体の合成も行った。すなわち、記憶促進効果などの有用な生理活性を持つSedamineの合成原料である1-フェニル-2-(2-ピリジル)エタノールを、2-フェナシルピリジンの不斉還元により高い光学収率で得ることに成功した。
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