本研究では、ボロンドープダイヤモンド電極の陽極酸化などによるドーパミン/アスコルビン酸系への電気化学的選択性発現機構等を電気化学的・光電気化学的なアプローチにより明らかにすることを目的としている。 ダイヤモンド電極における電気化学的選択性の発現においては、表面水素終端を置き換えて生成される酸素終端が非常に重要な役割を担っていることが、XPS、電気化学測定などにより明らかになった。特に、酸素終端化処理法により、その影響が異なってくることもわかってきた。酸素プラズマ処理は、その中でも最も表面への影響が大きく、陽極酸化処理よりも顕著な電気化学的選択性、すなわち特定の酸化還元種に対する電子移動速度の低下が観測された。さらに表面カルボニル基と選択的に反応するDNPH分子により修飾を行ったところ、電子移動速度が劇的に変化したことから、カルボニル基の存在が大きく効いていることがわかった。また、光電気化学ダイナミクスの測定においても、酸素プラズマ処理により、光電流の減衰が早くなり、長波長域でも光電流が観測されることがわかった。この事実は、酸素プラズマ処理によりダイヤモンド表面が酸素終端化されるのみならず、欠陥の生成や、準表面領域における水素放出が引き起こされていることを示唆している。したがって表面および表面近傍に存在する水素の影響を定量的に評価する必要がある。
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