研究概要 |
本年度はまず、剛直な導電性高分子であるポリピリジン(PPy)の合成およびPPy-塩化白金(IV)酸錯体の形成に焦点を当てた。PPyは、山本らの方法に従い合成した。すなわち、N_2下で脱気DMF中にNi(cod)_2触媒および2,2'-ビピリジンを入れ、これに2,5-ジブロモピリジンのDMF溶液を添加し、60℃で2時間攪拌することにより、茶褐色沈殿物を得た。UV-visおよびFT-IR測定から、生成物はPPyと同定された。PPyを塩化白金(IV)酸水溶液に分散させ3時間還流すると、粉末は茶褐色から橙色に変化し、また上澄み中の塩化白金(IV)酸イオン濃度が減少したことから、PPy-塩化白金(IV)酸錯体(ピリジンユニット:塩化白金(IV)酸イオン=3:1(モル比))の形成が示唆された。 次に、塩化白金(IV)酸イオンの還元による白金量子細線の合成について検討した。まず、ギ酸/水/メタノール混合液溶媒中、PPy存在下で塩化白金(IV)酸のメタノール還元を行ったところ、孤立した球状ナノ粒子しか得られなかった。さらに、塩化白金(IV)酸の水素還元および水素化ホウ素還元を行ったが、いずれも孤立あるいは凝集した白金ナノ粒子が得られたのみである。そこで、PPyの溶媒であるギ酸の還元能に着目し、ギ酸/水混合溶媒中、PPy存在下で塩化白金(IV)酸を還流した結果、線幅40〜70nmの細線構造が形成した。TEM観察から、細線は白金の単結晶ではなくナノ粒子が集合した多結晶構造であることが分かった。来年度は、細線の形成機構、単結晶化、線幅制御について検討するとともに、その二次元組織体の形成を目指す。
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