山本らの方法に従い合成した剛直な導電性高分子であるポリピリジン(PPy)について詳細に検討するため、MALDITOF-MS測定を行ったところ、ピリジンユニットが4〜9個重合した4〜9量体が主生成物であることが分かった。合成したPPy存在下、塩化白金(IV)酸をギ酸還元した溶液を炭素基板上に展開すると、基板上に線幅40〜70nmの細線構造が形成し、細線は同一方向に配向していた。しかし、TEM観察から細線は白金ナノ粒子が集合した多結晶構造であることが分かった。さらにこの細線を高分解能TEMで観察した結果、細線表面に原子あるいは分子の規則構造が観察された。その間隔は約0.25nmであり、白金の{111}面間隔(0.227nm)より若干大きいことから、PPyの規則配列であると推察される。以上の結果から、溶液中で生成した白金ナノ粒子は細線構造を形成していないが、基板への展開・溶媒の乾燥過程において、PPyの配列に伴い白金ナノ粒子が直線上に集合し配線構造を形成したものと考えられる。 一方、対照実験として、ランダムコイル状高分子であるポリアクリル酸ナトリウム塩およびポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)存在下で、塩化白金(IV)酸の水素還元を行った。その結果、基板上での高分子の配列がないため、予想通り白金ナノ粒子は基板上で細線構造は形成しなかったが、水素によるPt^<4+>の還元速度が非常に遅いため(10時間で還元終了)、白金ナノ粒子は熱力学的に最も安定な{111}面に囲まれた正四面体が主生成物となった。すなわち、アルコール等の強い還元剤を用いると速度論で制御されたcubo-八面体が、弱い還元剤では熱力学的に安定な正四面体が主に生成することが分かり、Pt^<4+>イオンの還元速度の制御により粒子形状を制御できることが明らかとなった。
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