細孔径4nm程度の均一かつ規則的なメソ細孔を有するシリカ(MCM-41)はテトラエトキシシラン(TEOS)をハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム水溶液中で加水分解することにより合成できる。このとき2塩基酸1金属塩を添加してメソ細孔の鋳型となる界面活性剤ミセルの形状を制御した結果、繊維状MCM-41を合成することに成功した。界面活性剤に塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTMACl)を用い、塩と界面活性剤のモル比を1に保ちながら混合溶液濃度を系統的に変化させて(HDTMACl濃度、[HDTMACl]=0.027-0.005mol/L)調製を行ったところ、いずれの濃度でも繊維状MCM-41が生成した。これは、紐状ミセルが細孔構造ならびに粒子の繊維化の規制剤となったことを示唆する。[HDTMACl]が0.027mol/Lから0.005mol/Lに減少するに伴い、メソ細孔の六方構造に由来するd(100)は4.4nmから4.7nmに増加すると共に構造規則性が減少することがX線回析測定から判った。77kでの窒素吸着等温線も[HDTMACl]が0.008mol/L以下になるとメソ細孔への窒素毛細管凝縮による吸着量の増加が緩やかになり、細孔の不均一性を示唆した。TEOSの加水分解で生じたシリケートは界面活性剤のイオン性官能基と複合し、これが前駆体となり規則的に集合・配列、シリケート間の縮合によりメソ細孔性シリカが生成する。従って[HDTMACl]が高いほどシリケート-ミセル複合体が集合体を形成しやすくなり、細孔構造規則性が高くなったとみられる。[HDTMACl]の減少に伴い繊維長は増加し、[HDTMACl]=0.008mol/L以下のとき約1mmに達した。透過型電子顕微鏡観察の結果、メソ細孔は主として繊維軸に平行に配向し、細孔の深さは1.5μm程度であることが判った。
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