自己集合法を用いて形成された「D-A-金」型光電変換素子(D:ルテニウム錯体、A:ビオローゲン誘導体をそれぞれ組み込んだ)によって実現された光電変換の効率を向上させる指針を得るため、詳細な検討を行った。その結果、D-A間の電子移動効率と光電変換素子の光電変換挙動には相関があることが判明したので、このまとめを学術雑誌に報告した。 同時に、さらなる光電変換効率の向上を目指し、「D-2A-金」型光電変換素子(同様にD:ルテニウム錯体、A:ビオローゲン誘導体を用いた)を設計し、素子形成に必要な、電子拡散機能を持つD-2A分子の合成を行った。また合成したD-2A分子の光化学的性質、電気化学的性質について測定を行い検討した。電気化学測定、吸収スペクトル測定の結果、D部位と2A部位の間には基底状態での相互作用はないことがあきらかになった。また、発光スペクトル測定の結果、D-2A分子は対応する構造のD-A分子に対して、電子移動効率が著しく向上し、光励起したD部位の電子は、その90%以上が2A部位へ移動していることがわかった。また、それぞれの測定結果を総合的に解釈したところ、2A部位での電子拡散が生じている可能性があることがわかった。 実際にこのD-2A分子を金表面に自己集合法を用いて固定し、「D-2A-金」型光電変換素子の光電変換能について測定を行ったところ、対応する構造を持つ「D-A-金」型光電変換素子よりも、光電変換効率が高いことが判明したので、このまとめを現在学術雑誌に投稿中である。現在、より詳細にD-2A分子の光化学的性質、電気化学的性質(特に2A部位の電子拡散機能について)と、「D-2A-金」型光電変換素子の光電変換挙動との相関をあきらかにするため、蛍光寿命測定、過渡吸収スペクトル測定などの手法を用いて検討中である。
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