酸化物半導体に混合あるいは表面吸着した色素分子は、光エネルギーの高効率な補足と引き続く電子移動反応を可能にし、材料の導電性や光電変換効率を飛躍的に増大させる。本研究では、表面ゾルゲル法を用いて金属酸化物と光機能性色素との原子レベルで組成傾斜化されたヘテロ多層薄膜を作成し、色素と酸化物層とのベクトル化された電子移動システムを構築することを検討した。 チタニアやインジウム等の酸化物と水酸基を有する導電性高分子(ポリチオフェン、ポリアニリン誘導体等)との交互積層薄膜の構造をQCM重量測定やXPS測定により解明した。これらの多層薄膜を光電変換素子として用いると、酸化物層のシーケンス制御により電子移動の方向を変化させることが可能となった。一方、色素と金属酸化物との交互積層薄膜をITOや金表面に作成し、水中での光電流の発生挙動が検討され、金属酸化物層の組み合わせと光電流量との関係が調べられた。特に、ポルフィリン系色素の積層シーケンスの制御と光電流発生挙動について重点的に検討した結果、ITO表面で酸化インジウムゲルをマトリックスとする色素の積層構造を作成した場合、高効率な光電変換効率を与えることが確認された。これらの研究成果を基に、酸化物ナノ薄膜と色素分子との電子的相互作用に関する研究が均一溶液系でも検討され始めた。
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