アルカリ金属をドープしたフラーレンにおいて高温超伝導が発見されて以来、フラーレンを骨格にもつフラーレン重合体あるいはヘテロ原子と結合したフラーレンの示す特異な物性が新世代材料として注目されている。しかしそうしたフラーレン化合物の効率的な合成法は未だ確立されていない。本研究では、フラーレンの超薄膜化技術を利用して、新規フラーレン化合物の合成法の確立、およびその反応機構の解明を目指す。 平成11年度は、(1)C_<60>-Si混合薄膜の作成法の確立、(2)薄膜内における光反応過程に関する考察、(3)C_<60>とSi原子・微粒子との相互作用に関する考察を行った。またこれと平行して、(4)C_<70>薄膜調整用蒸発源の作成、および(5)その性能評価も行った。(1)の研究においては、薄膜中のCおよびSi原子の含有比をX線光電子分光法によるC1sおよびSi2pスペクトルの強度比から実測する方法を応用することにより、薄膜内のC_<60>とSi原子の混合状態に関する知見を得た。また(2)の研究において、C_<60>とSiの化学的相互作用は光によって誘起されることを明らかにした。さらに(3)においては、C_<60>は原子状Siと効率よく反応することを見いだした。またこれらの考察に当たっては、半経験的分子軌道計算法(MOPAC)を用いた構造・安定性の評価も平行して行った。(4)の開発においては、高融点試料に対応できるようにタンタル製熱シールドとタンタル製絞り板を装備した蒸発源の設計を行った。実際(5)において加熱試験を行ったところ、900℃まで効率よく加熱できることを確認した。
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