新たな電子キャリア型超伝導体の合成を目指し、Bi系酸化物超伝導体について、電気化学反応を用いたLiインターカレーションと酸素ゲッターアニールによる酸素量制御の2つの手法を検討した。 まず、電気化学反応および酸素ゲッターアニールを行うための出発試料として、できるだけ均質な多結晶焼結体を得るために錯体重合法を試みた。既報をもとに合成手順を検討し、沈殿を生じない合成条件を確立した。 次に、これまでLi導入による構造・物性変化の検討を行った実績のあるBi_2Sr_<1.5>Ca_<1.5>Cu_2O_<8.17>に対して、電気化学反応によるLiの過剰な導入を試みた。その結果、Li_xBi_2Sr_<1.5>Ca_<1.5>Cu_2O_<8.17>の式でx〜0.6までLiが導入されることを明らかにした。しかしながら、Cuの平均価数は2以下まで低下することがなく、またBiの平均価数も3以下になることはなかった。過剰に導入されたLiに対して、酸素量の増加によって電気的に中性が保たれていると考えられる。組成の異なる試料として、ホールキャリアがほとんどない出発試料を通常の焼成条件で作製できるBi_2Sr_2YCu_2O_<8.5>系についても検討を行った。この場合は、ICP組成分析によってもLiの導入はほとんど認められず、構造・物性ともに明確な変化が認められなかった。また、酸素ゲッターアニールによる還元条件の検討を行った。Bi-2201相については、既報と同様に過剰酸素がほとんどない試料の合成が可能であることが確認できた。しかし、Bi-2212相については、本研究で検討した合成範囲においては過剰酸素を完全に取り除くことはできなかった。
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