研究概要 |
超分子形成に基づく機能・物性発現に着目し、自己集合体形成に基づくエキシマー形成を利用することにより、ピロリン酸イオン(PPi)の選択的検出を行った(J.Am.Chem.Soc.,1999)。認識部位としてグアニジウム基を導入したピレン誘導体を新規合成し、メタノール中での種々のアニオンとの錯形成能についてH^1 NMR分光法、蛍光分光法により検討した。その結果、ピレン誘導体がピロリン酸イオンを鋳型として自己組織化し、サンドイッチ構造が構築されることを見い出した。この自己集合体形成は、ピレニル環同士の相互作用であるエキシマー発光により検出可能である。他のアニオン種(HPO_4,^<-1>,H_2PO_<4->,CH_3CO_<2->,SCN-,Cl-,Br-)では蛍光スペクトル応答はほとんど見られず、ピレン誘導体がピロリン酸イオンに対し,ほぼ選択的に蛍光スペクトル変化を示すことが分かった。 また、アニオン認識部位を有する新しいクラウンエーテル誘導体を合成し、カチオン―アニオンに対する協同的同時認識の発現に成功した(Chem.Lett.,1999;Anal.Sci.,1999)。アニオン認識部位とカチオン認識部位を共役系で繋いだクラウンエーテル誘導体のカチオン及びアニオンに対する錯形成挙動について^1H NMR分光法により評価したところ、Na+との錯形成によりアニオンとの錯形成能が飛躍的に増大することを見い出した。更に錯形成の熱力学的パラメーターを算出し、錯形成能の増大が主にエンタルピー由来であることを明らかにした。このような協同的同時認識能を有する人工レセプターの開発は、アルカリ金属イオンによる酸素の活性化等の生体システムのモデル系として重要であるばかりでなく、人工酵素、膜輸送、イオンセンサーなど生化学的・分析化学的応用が期待でき、新規イオン認識蛍光プローブを開発する上で有用な基礎知見を得ることができた。
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