研究概要 |
電極表面に吸着し、アニオンを認識するHost-Guest系はこれまでほとんど報告例がない.本研究は電極表面において特異的な疎水性環境を構築することにより,従来困難であった水溶液系におけるアニオン認識を実現し、非対称な環境に鋭敏な第二高調波発生により高感度検出を目指すものである.研究一年度目の本年度は,電極表面に吸着し,リン酸などのアニオンを認識する物質系を構築するとともに、第二高調波発生による界面におけるアニオン認識メカニズムの基礎検討を行った. アニオンを認識し電気化学応答を持つ分子としてN-(1-anthraquinonyl)-N'-octylthiourea(Host 1)を新規開発した.種々のアニオン水溶液に対する上記分子の金単結晶電極上での電気化学応答を測定したところ,リン酸2水素イオン溶液中でのみ,表面吸着種に特有の,酸化・還元が対称的なサイクリックボルタモグラムが得られ アニオンとの錯生成により表面に秩序構造をもった自己組織化膜が形成されたことが示された. Ti:Sapphireレーザーの基本波(波長750nm)を金単結晶電極表面に照射し、発生する波長375nmの第二高調波を検出するシステムを構築し,上記電極界面Host-Guest系の解析に利用した.Host1:リン酸2水素イオン系ではHost1:過塩素酸系と比較して約5倍の強度の第二高調波が検出され,表面における秩序構造形成がリン酸2水素イオンにより促進されていることが明らかとなった. 以上、研究一年度目において,第二高調波発生によるアニオン認識・検出が可能であるHost-Guest系の電極表面への構築を達成した.研究2年度目においてはより高感度な検出を第二高調波により目指すとともに,高選択的な分子を設計し、電極表面に総合的なアニオン認識場を構築することを目指す.
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