研究概要 |
1.金電極表面に4-メルカプトピリジン(4-MP)の自己組織化単分子膜(SAMs)を介してEuのキレート錯体Eu(PTA)_3(PTA:pyvaloyltrifluoroacetone)を固定し,この電極表面におけるEu(PTA)_3とアミノ酸との錯形成に基づくFe(CN)_6^<3-/4->の膜透過性の変化をサイクリックボルタンメトリーにより検討した.その結果,アミノ酸として用いたL-トリプトファン,L-アルギニン,L-グルタミン酸(それぞれ中性pHの水溶液中で,無電荷,正電荷,負電荷を持つ)のうち,L-グルタミン酸を含む水溶液に浸したときのみ,その濃度に応じたFe(CN)_6^<3-/4->の膜透過性の抑制が観測された.一方,4-MPのみを表面修飾した電極や未修飾の金電極では,いずれのアミノ酸に対しても有意なFe(CN)_6^<3-/4->の膜透過性の変化は観測されなかった.これは,電極表面に修飾されたEu(PTA)_3と負電荷を持つL-グルタミン酸が固/液界面で錯形成した結果,電荷の反発によりFe(CN)_6^<3-/4->が電極近傍に近づきにくくなったことに起因すると考えられる. 2.さらに,ランタノイド錯体を電極表面に固定する分子として,ランタノイドイオンとキレート錯体を形成することが知られている1-phenyl-3-methyl-4-acyl-5-pyrazolone(PMP)のチオール誘導体を新たに合成し,そのSAMsの金属イオン認識能をFe(CN)_6^<3-/4->の膜透過性の変化により評価した.その結果,中性pHの水溶液中において,電極表面のPMPと3価の金属イオン(La^<3+>,Gd^<3+>,Yb^<3+>,Al^<3+>)との錯形成に基づくFe(CN)_6^<3-/4->の膜透過性の増加が観測された一方,2価や1価のイオンではそのような変化はほとんど観測されなかった.このことから,このPMPのチオール誘導体の金電極表面上のSAMsがランタノイドイオンと錯形成できること,さらにこれを用いてランタノイドの錯体を金電極表面に固定できることが示された.
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