1.イネにおけるp-SINE1分子種の解析 イネ植物体の各組織、およびDNAメチル化阻害剤5-アザシチジン(5-azaC)や熱(42℃)処理をしたイネOc培養細胞、におけるレトロポゾンp-SINE1の転写産物を5'RACE法とprimer extension法を用いて解析した。その結果、(1)いずれの組織、細胞においてもp-SINE1配列の5'端付近で始まる転写産物と、5'端に10塩基対以上の様々な付加配列を持つものとが発現していること、(2)全転写産物に対する5'端付近で始まる転写産物の割合が、植物体の穂や5-azaC処理をした培養細胞で顕著に大きいこと、(3)5'端付近で始まる転写産物の多くが、p-SINE1の特定のサブファミリーから転写されたものであること、が明らかになった。 2.p-SINE1配列の転写制御に関与するメチル化塩基の特定 ゲノムDNAにおけるp-SINE1配列のメチル化されている塩基を、bisulfite genomic sequencing法で特定したところ、p-SINE1配列内のCGおよびCNG配列のシトシン残基が全てメチル化されていることが示唆された。 3.p-SINE1のRNAポリメラーゼIII(polIII)によるin vitro転写系の確立 タバコBY-2細胞核抽出液を用いたin vitro転写系によって、polIIIによるp-SINE1の転写産物と思われるRNAを検出することに成功した。 4.p-SINE1配列に挿入していた新規転移因子の同定 p-SINE1の解析の過程で、p-SINE1配列に挿入していた転移因子を発見し、それが、30塩基対を単位とする縦列型反復配列を含む、ユニークな構造を持つイネの新規転移因子であることを明らかにした。
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